映画「逆転のトライアングル」を観て世界に蔓延するいびつな価値観考える
先日映画館でカンヌ国際映画祭でパルムドール受賞した映画「逆転のトライアングル」を観てきました
世界に衝撃的ないびつな価値観をメッセージとして発信する怪作の映画でした
株式会社 日向の鳥辺康則です
お金持ちやファッションモデルたちが豪華客船に乗り旅に出るのですが、途中で海賊に会い船が座礁しある島へたどり着きます
それをきっかけにお金を持った人たちとお金持ちに虐げられてきたアジア系労働者の立場が逆転します
そんな物語なのですが、監督の世界へ向けての痛烈なメッセージが濃いが故に心がモヤモヤしながら最後のラストまで突き進みます
簡単なストーリーと予告編はこちら⬇︎
モデルでインフルエンサーとしても注目を集めているヤヤと、人気が落ち目のモデルのカール。美男美女カップルの2人は、招待を受けて豪華客船クルーズの旅に出る。船内ではリッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでもかなえる客室乗務員が笑顔を振りまいている。しかし、ある夜に船が難破し、海賊に襲われ、一行は無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態のなか、人々のあいだには生き残りをかけた弱肉強食のヒエラルキーが生まれる。そしてその頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃係だった。
モデル・インフルエンサー・大富豪・セレブ達が漂着した無人島で、サバイバル能力が異常に高いトイレ清掃員が頂点に立つというブラックコメディ
しかしこの映画がすごいのは、そのエピソードの中にたくさんの世界で蔓延してるいびつな価値観がメッセージとして練り込まれていることです
「格差」「平等」「ルッキズム」などが、問題になることが多い昨今ですが、人間の心の奥底に根付いた意識はいくら時代が変化し大義名分を掲げてもそう簡単に変わるものでは無い現実
でもとてもすごい映画だと思ってます
一般の人には理解できませんがお勧めです
監督は『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などのリューベン・オストルンドでカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞するのは2回目です
人間の群像模様を描き世界の問題を痛烈に描き出すことが得意な監督です
ここから先は感想などネタバレもあります
ここから先は見てない人は読まないでね⬇︎
映画は3部構成になってます
それぞれの分で現代人が目をそらしがちな人間の奥底に存在する、ある意味普遍的な感情をめちゃくちゃ皮肉的に表現してます
第一部
カールとヤヤ
舞台で活躍するモデルのヤヤとルックスは良いのですが落ち目のモデルのカールのデートで、飲食した場合のお金をどちらが払うかのやりとりが永遠に続きます
正直イライラします
そんなの彼氏のカールが払うの当たり前だろと思ってしまいますが、彼は言い訳たっぷりにあーでもないこーでもないとずっと言います
こんな奴いたら一発でアウト
しかしこのやりとりの中から「男女平等社会」の難しさが浮き彫りにされます
とてもシュールでイライラする内容ですが、実際すべての人が男女平等と言いながらそれぞれの価値観を持っている
見る人によって、その価値観がはっきりとする内容です
私自身の男女平等とは見ていないことに気がつかされます
だからイライラするのです
とても痛烈のメッセージを感じます
第二部
豪華客船がテーマになります
お金持ちと船の中で虐げられて、働くクルーのギャップがとても鮮明に描き出されます
お金さえ持ってれば、何を言ってもわがまま放題でいられる乗客の方と乗客に少しでも応えようとするチップで生きていくクルーの方々
それによって「格差社会」が描き出されます
さらに、資本主義と共産主義とどちらが本当に幸せなんだろうと言うテーマまで突きつけてきます
そして大富豪やセレブが高級料理を食べては、吐いて倒れるセレブたちの姿をしつこいぐらいに描いています
どんなに有名でもお金を持っていても、自然な生理現象の中では無意味だったと言うことです
第三部
船が海賊に破壊され無人島へ漂着します
そこで生き残った人々の人間模様が描き出されます
どんなにお金を持っていても、高級な時計を持っていても無人島でも意味なのです
そこで、お金を持った大富豪と豪華客船のクルーの立場が逆転します
普通はそこで清々しい思いになるのですが、今作品が怪作と言うのはここからなんです
無人島に漂着したセレブ達、その頂点に立ったのは何故かトイレ清掃員だったのです
トイレ清掃のまねちゃったアジア系の女性が、サバイバルの知識とテクニックを駆使してリーダーになります
そしてイケメンの男を囲い込み帝国の女王みたいに振る舞うのです
食物と火を得るために従うしかないお金持ちの方々が実に非力で滑稽に見えます
ここでのテーマは「ルッキズム」です
外見に基づく差別や偏見を指す言葉をルッキズムと言います
通常映画の中でぱっとしない中年のアジア系、女性がリーダーになり展開する物語はありません
そこが監督が痛烈にメッセージを払ってるんです
そして、驚愕のラストがあなたに問題提起を与えます
ここから先は、実際に劇場で見てご自身の差別的感覚を認めてください
決して娯楽作品でもなければ、痛快コメディもありません
人間の根底にある差別感情を浮き彫りにさせる映画です
まとめ:第1部でカールの愚痴を長々と聞かせ、第2部で嘔吐しまくるセレブをしつこい程に見せておいて、肝心のラストはここで終わり?と思い「今まで何を見せられてたんだ!」と戸惑います
考えてみれば全部が特殊な構造の作品なので、このラストは「綺麗な映画作品」を求めている観客への監督からの最大の皮肉なのかもしれませんね
とにかくとても考えさせられる、深い意味がある映画なので見てください
そんなことを感じたのでブログに書きました
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